最近、白髪を染めずにありのままでという「グレイヘア」という言葉を見聞きするようになりましたが、その度に思い出される事があります。
数年前のことです。混み合った列車の中で座っていた一人の少年が「どうぞ」という言葉と共に立ちましたが、その空いた席には誰も座ることがありませんでした。彼が声をかけたであろう女性は白髪が目立つ、いわゆるグレイヘアではありましたが、大人の目から見れば席を譲られるような年齢とは思えませんでした。そのとき周囲に漂った微妙な空気と戸惑った顔をした少年の姿は、うまくフォローしてあげられなかった後悔とともにいまだに思い出され、さらにはグレイヘアについて考えさせられるのです。
当時、白髪が目立つ人を見て即高齢者だと考えた小学生も、今では成長して見方が変わったでしょう。また、グレイヘアに限らず世の中の考え方も変化しつつあり、数年後の常識がどうなっているのか想像がつきません。
ただ、一人で声をかけた優しい気持ちや行動力はいつまでも持ち続けていて欲しいですし、例の出来事がきっかけで彼が「もう席を譲るのは辞めた」となっていないことを願うばかりです。