「宿題」

私は月に一度、友人と山登りをしている。

山といっても金華山か百々ヶ峰に登ることが多いが、いくつかコースがあるので、それなりに楽しめている。その中で、草木や鳥の名前等が、人より少し分かるということに気が付いた。

それには、思い当たることがある。

中学生だった頃、理科の宿題で「自然観察ノート」というのを毎日書かなくてはならなかった。理科なのに、ベートーベンのような風貌のこわい先生だった。

1日5~6行書くだけだったが、その宿題が好きではなかった。自然豊かな環境だったため、草花や虫の多い季節はよいのだが、寒さの厳しい季節には書くことがない。そこで星空を観察したり、初霜、初雪、初氷…とにかくネタ探しに悩まされていた。2,3年生になると、1年前のノートを書き写すというズルさを覚えた。受験に関係ないので、とにかく出しさえすればよいという考えだった。

あれから30年以上経つが、四季折々の自然の変化に割と敏感に気付けるのは、あの宿題のおかげではないだろうか。畑で草取りをしていても雑草の名が分かり、嫌々やらされていたあの宿題から、ささやかな喜びを日々もらっているのだ。「こわい先生ではなかったのかもしれないな」

先生が宿題にこめてくださった思いに、感謝しかない。