「蛍」

6月というと梅雨の季節だが、私にはもう一つ浮かぶものがある。蛍だ。

私が生まれ育った所は「ゲンジボタルの里」としても知られ、中学校では蛍の幼虫を飼育し、川に放流していた。

川辺を観察しなくても、蛍が出始めたことは分かった。川沿いの道を歩く人の姿や駐車車両が増え始めるからだ。そうなると、1年に一度くらいは見ておかないと…という思いに駆られ、一人でもへっちゃらで暗い夜道を蛍鑑賞に出かけていた。

蛍の飛び方光り方には個性がある。「あの子は優雅でいいな」とか「あの子はちょっとせっかちだな」とか「あの子の飛び方はいかにも虫っぽいから、蛍の学校で学び直した方がいいな」とか(笑)。ポツポツと光っていた蛍達が一斉に光り出すような時もあり、その光に癒されたり、感動させられたりして、いつまでも見ていたいという気持ちにさせられていた。

一宮に来た時、子どもに蛍を見せたければ実家に帰るしかないと思っていたが、思いがけず子ども達が通う小学校でその機会を得ることができた。地域の方が校舎の一角でお世話をしてくださった蛍を、年に一度「ホタル観賞会」として夜の学校で見ることができたのだ。

夜の学校は子ども達にとって特別で、テンションの高くなっている子、親と一緒で はにかんだ様子の子、お風呂あがりでさっぱりしてきた子など様々で、お祭りのような雰囲気があった。蛍に関するクイズが出題され、蛍のことを学びながら蛍鑑賞をするという流れになっていた。

テレビなどの映像やアニメで蛍を見ることはできるが、実物の蛍の「あの光」は、映像ともアニメとも別で、言葉で表すのは難しい。同じ光を見ていても、それを見る人の心の在り方次第で、見え方も変わってくる。年齢があがれば、見え方も変わってくるかもしれないと、都合のつく限り、毎年楽しみに参加させていただいた。

お世話してくださる方の年齢的な問題と聞いているが、今は学校で蛍を見ることはできない。多くの子ども達に「あの光」を届けるために長年尽力してくださった地域の方々に感謝の気持ちと、「学校の蛍」の思い出がいつまでも私達の中にあるということをお伝えしたい。

本当にありがとうございました。

※木曽川町の蛍鑑賞会は、以前にこちらのHPでも紹介されました。

詳細は、こちらをご参照ください。